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Trans Northern Alps Day 4 終らざる夏の風に

早月尾根2200mの下りを飛ぶように下り、降り立った馬場島は、稜線のそれとは違う湿度を伴なう真夏の、むせ返る様な風がふいていた。

車道を少し歩き、キャンプ場の水場で汗を洗い流しながら体を冷やした。

濡れた体を乾かしながら、見上げると剱の峰に雲が踊る。

熱い夏の風が、いつまでも馬場島の白樺の木々を揺らしていた。


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追伸、馬場島から富山電鉄上市駅まで送ってくれた、アワムラ君、ありがとうございました。
君は、このブログは見ることはないだろうが、この場でもう一度お礼を言っておきたいと思う。
あの後、無事、青森の三沢まで14時間の道のりを走破できたのだろうか。

思えば、人との出会いの山旅でもあった。













  












岩と雪の殿堂、剱岳。
この山旅最後の名峰を、この日はじっくり堪能しながら越えた。

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登り始めてすぐに、コバイケイソウの群落が出迎えてくれた。
数年に一度のコバイケイソウの当たり年に、初めて遭遇したこの旅。
一生に一度かもしれない。

最後にもう一度、しっかり目に焼き付けておけ。
そう言われたような気がした。







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後立山の向こうから太陽が昇る。
瞬く間に剱の岩稜を照らし出した。

山々がモルゲンロートに染まってゆく。







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岩のルートを捩りながら、時に振り返り、その光景に目を奪われる。







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4日目にして、山も身体も快調だ。






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越えて来た険しいルートが照らし出される。







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そして、自分より上には、紺碧の空しか無くなった。

雲さえも無い。

剱岳山頂。

ついに最終ピークに到達す。

笑いが止まらない。

過ぎて来た山々を一望し、畏敬の念を送る。

槍から始めて剱。

いくつのピークを越えて来たのだろう。









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さらに北へ続く猫又山。
その向こうに、遠く、日本海が霞んでいた。







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頂上より、北へ続く岩尾根。







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眼下に長次郎谷が深い。







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この山旅のフィナーレを飾るにふさわしい、この旅最強の大下り、早月尾根。
高低差2200m以上、一般コースタイム6時間弱。
下り初めは、画像の様にカニのハサミと呼ばれる難所を含む鎖場が連続する。







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険しい岩稜帯の下山道。

傍らに、マツムシソウが風に揺れる。








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悪い岩稜帯を抜け、剱岳山頂を振り返る。

雪渓がやけに眩しかった。








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早月小屋。
標高約2200m。
まだ、標高差としては1/3下りて来ただけ。
小休止のつもりが、登り途中のトレイルランナーと話が弾み、大休止となってしまった。

そして、ここからは約1500mもの樹林帯の単調な下りが有るだけである。

既にズタズタになってしまった、スポルティバのソール。
果たして、馬場島までもつのか?








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早月尾根はトレイルランナーの修練の場でもある。
この日も数名のランナーと擦れ違った。
生半可なランナーでは、登りはともかく、下りでさえ走り切れるものではない。
馬場島からこの尾根を越えて、剱御前小屋で食事をし、元の道を馬場島まで、往復11時間で走破した等、様々な伝説が有るらしい。







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そして、馬場島に下り立つ。

早月尾根の登山口に有る石碑と、最後まで持ち堪えてくれ
たスポルティバ。
ここに眠る?







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風のように駆け抜けた4日間。

顧みる高嶺に、夏の雲が千切れ飛んでいた。

思いは、あの雲のように、まだ、あの峰々と戯れているのか。

それとも、ホシガラスとなって、今だ、岩稜から岩稜へと羽ばたいているのか。







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北アの稜線とは違う焼けるような夏の風に、馬場島の白
樺がいつまでも揺らいでいた。









by hoshigarasu7 | 2013-08-24 13:51 | trans mt. running